パンの話Ⅲ

ジイちゃんは限度を知らないというか、手あたり次第的にかなりの数のパンを買ってくる。

中には誰も手をつけない不人気商品も。

ある日、俺が見た時に残ってたのは『まぁ、これだろうな』な2つ。

レーズンの入ったパンと、イチゴだかリンゴだかのジャムパン。

イチゴだかリンゴだかは買ってきた本人も知らないって。

男ばっかりの職場で、ジャムの需要はないですわ。

『調理パンにしようよ~』と、買ってきてもらって文句を言ってみる。

それはそれで置いといて。

そこにいたシルゾーに『レーズンが嫌いだったのって、おまえの娘だったっけ』と聞いてみた。

『そんなことはないと思うけど』

『身近なところに「レーズンが嫌い」って奴いなかったっけ?』

『いたような気が・・・あ!』

『誰?』

『・・・俺だ』

どうだい?