アイータが考え直してくれるらしく、名古屋から帰ってくると。
なぁ、俺たち、これまでの空白を埋めることが出来るかなぁ。
新幹線からバスに乗り継いで来る予定だが、“待つ"という行為が嫌いな俺、こっそり東京駅まで迎えに行く。
道中で事故にでも遇えば、二度と会えない片道切符。
『どこにいるの?』と聞かれれば、『結婚式の翌日に耐えきれなくて車の中でレジ袋にションベンをした時に停めてた八重洲側』としか言いようがない。
無事に合流して、車を走らせる。
またアイータには行き先を告げない作戦だが、俺の頭の中は柴又の帝釈天。
だって、男はつらいから。
いつもは『どこ行くの?』とうるさいアイータが黙ってたのは、『「どこ行くの?」とうるさい』と言われるからだろう。
帝釈天では自然と寅さんの唄を口ずさみたくなるように出来てる。
奮闘努力の甲斐もなく、今日も涙の日が落ちる。
…深いなぁ。