夜勤明けの帰り道で見覚えのある人影発見。
その第一村人は去年の春に定年退職したマサさんだった。
声をかけ、しばし雑談すると、『散歩ぐらいしかやることがないんだよ』と言う。
定年を迎えたらやりたいこととして挙げていた旅行も最初のうちだけで、今はそうでもないと。
『だからって、また働く気にはならんでしょ?』
『絶対にならん』
ほら。
なるわけねぇじゃん。
ゴールしたあとにまた走り出さないでしょ、普通。
それで、俺たちの時代には定年引き上げとかになってたら怒るで、しかし。
そもそも、“散歩ぐらいしかやることがない”がイヤなことだと誰が決めたのかね?
政府かね?社会かね?
嫁かね?嫁かね?
“散歩ぐらいしかやりたくない”を叶えたのだと思える余裕がこの国には足りない。