アパートのすべての荷物を運び出した。
すっからかんだね。
あたりまえだけど、結婚前にアイータと二人で見に行った時と同じ状態。
ここで暮らしてたんだなぁ。
隣のガキが四六時中うるさかったのは参ったけど、彼らが引っ越してからはずっと空き部屋のままで、居心地が良かった。
小梅は違う環境に順応しているようだが、やっぱりアパートを“ぼくんち”と言う。
そりゃ、小梅にしてみたら赤ちゃんの時から過ごした場所だもの。
『どうしてあぱーとはおわっちゃったの?』と聞いてくるのを見ると、何だか、可哀想な気さえする。
っていうか、実家に引っ越してからは3人が一緒にいる空間が減った。
アパートの狭いリビングでちょうど良かったのかもしれないなぁ。
あぁ、この壁の落書きは小梅が描いたものだ。
父ちゃんが今まででいちばん小梅を叱った日だね。
そして、この押し入れ戸は開かなくて蹴ってどうにかしようとしたらバキッてなったものだ。
やっぱり、ちょっと寂しいですよ。
『明日、アパートにバイバイしに行こう』と小梅と約束をした。