出入りしてた業者のおっちゃんがあいさつに来たんだ。
夢の定年退職らしい。
いや、正しくは二年前に定年していたけど、代わりがいないから続けてくれと言われて居残り、さらに延長を打診されたけど冗談じゃないと断ったんだとか。
定年を迎えた人があいさつに来た時は『羨ましい限りです』としか言えないんだ、俺。
心からの叫びだよ。
おっちゃん、俺を探す時は『休憩室に行けばいると思うんで』とか言って、俺のことを誤解していたようだけど、まぁ、そんな俺だから『羨ましい限りです』は真っ直ぐに捉えてくれるだろう。
今後、誰が代わりをやるのかは知らないけど、“休憩室に行ってみる”という探し方をしてくれず、いちいち呼ばれることになると思うとちょっと。