なみだ恋

小さい頃の断片的な記憶の中に子供服用のカラー箪笥があって、その上にラジカセが置いてあった。

そこから流れていたのが八代亜紀の“なみだ恋”。
特にその曲について親たちが話していたとかはなく、ただただ流れていた記憶。

だから、それが俺の原風景なんだわ。
若い頃から歌謡曲が好きで、今も変わらない。
時々“夜のヒットスタジオ”にガイジンが出演した時にはテロップの訳詞を見て程度を笑うくらい、イキって洋楽に走ることもなく。

“なみだ恋”が流れていたその場所には父親と母親がいて、それが普通だったはずなのに、いつの間にか遠い遠い過去のことになった。
八代亜紀が亡くなったというのは、俺にとって原風景がさらに遠くなる感覚。