鶴になった父ちゃん

7年前の朝、動かなくなった親父を自分の車で運んだ。

どうしても俺が連れて帰りたかったんだよ。

病院から家へ帰る途中、親父とよく行ったパチンコ屋の前を意識して通った。

晩年、病院に通ってた時は、帰りにスロットを打つのが楽しみだったようで、よく一緒に行った。

母親の車に乗せてもらうとグズグズ言われるからと、なるべく俺の車で行きたがってたなぁ。

俺の車に乗ったところで、たいして会話もしないのに。

だから、死んだ日の朝、俺の車に乗せてパチンコ屋の前を通った。

『もう打てねぇなぁ…』

棺桶にはスロットのコインを入れた。

目押しが出来ない親父には足りない枚数かもしれないけど。

コインか鶴かは、どうでもよくて。

だって、コインを鶴に置き換えてデフォルメすることぐらいは出来るよ。

それ自体は、そんなにたいしたことじゃない。

何て言うか、それを作品にして世に出せる剛が羨ましいのだ。