チェリー

私、処女なんです。

未だ、歯医者というところに行ったことがない。

予約がああでもないとかいうイメージはある。

まぁ、全体的に何がわからないのかわからない。

朝、妻が予約の電話をしてくれた。

キミは優しいね。

俺はキミがいないと何もできないよ。

というわけで、未知の扉を開けたわけです。

一応、先生には『初めてなの』と言ってみるも、『あぁ、そう』とだけ返された。

“初めて"は大切にしたかったわ、私。

結局、親知らずを抜くことに。

“親知らずを抜く"という響き、“ちょっと胃が悪い"ぐらいに格好いい。

歯医者を出たあと、しばらくは唾に血が混じっているのも、何か格好いい。

初めての歯医者は特に我慢できないほどの痛みもなく、サクっと済んだのだが、電話で予約をしてくれた妻の『若い女の人の声だったよ』には完全に騙された。

おかげで、家に帰っていちばん最初の報告は『オバちゃんじゃねぇか!』になった。