床屋では必要以上の会話をしたくない僕ちゃん。
なのに、初めて対応してくれたその兄ちゃん、腕時計好きらしく、俺の付けてる代物をきっかけに話しかけてくる。
嗚呼、腕時計の話とか、車の話とか、面倒くさい。
兄ちゃんは俺の時計に憧れてるらしく、だけど韓国で買った偽物しか持ってないんだとか。
偽物を承知で買ったのなら、それはそれでいいじゃない。
どうせ、見栄だろ。
俺の時計は結納返しのモノで、その価値は銘柄ではなく、アイータから“約束の品”としてもらったことにあるんだよ。
アンタの物欲なんざ、どうでもいいんだ。
いいから、もう少し短めにカットしてくれ。
ということは言えない僕ちゃん。
『うん…うん…ハハッ…』
ほぼシルゾー。
だけど、何かが違う。