この二週間、名古屋のジイちゃんに『タンッ』って舌を鳴らす技を伝授されたり、バアちゃんの餌付けに味をしめたりで、新しい知恵を付けて帰ってきた小梅。
コッチでの記憶はブッ飛んじゃってるのかと思いきや、ちゃんと覚えてました。
“ブタちゃん”を。
“ブタちゃん”とは、金運が上昇するらしき金色のブタの貯金箱。
アイータが知らない間に小銭を貯め込んでいる夢のブタ。
小梅は抱っこされて『ブタちゃんは?』と言うと、アパートの食器棚の上に置いてあるそれを見つめるのだ。
笑うでもなく、恐がるでもなく、ただ見つめる。
二週間振りでも、ちゃんとブタちゃんを確認するお利口ちゃん。
いずれにしても、小梅がこの世に生まれていちばん最初に覚えた言葉が“ブタちゃん”。
やがて、素敵な人に出会い、恋に落ちても、いちばん最初に覚えた言葉は“ブタちゃん”。