中学の頃から何度も道場には通っていたので、その厳しさは充分すぎるほど知っていた。
故に絶対に入るまいと思っていたのだが、入学して一週間が過ぎた時に先生に捕まり、選択権のない状態で結局は入部。
実際、厳しかったよ。
まだ先生が絶対的な存在で、ボコボコにぶん殴られるというのも普通にある時代だったし。
毎日、朝練のために早いうちから自転車で登校してさ。
365日のうち、364日は学校で柔道部の連中と行動を共にして。
わりと頻繁に先輩の家に泊まりに行って、朝方まで呑んだりしながらバカ話をして、そのまま登校して、また練習というのが、たまらなく楽しかった。
地元じゃ花火大会で、誰と誰が一緒に行ったらしいとか聞いたけど、その頃、俺たちは遠く離れた気仙沼で合宿だったなぁ。
何もないところだったけど、中心地で祭りがあるって聞いてさ。
夜、みんなで無人駅から電車に乗り、行ったっけ。
仲間の一人が『生きててよかったぁ!』と叫んだけど、柔道漬けの日々の中、知らない土地の夜空に咲く大輪の花火を見ながら、全員がそう思ったよ。