回帰線

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冬になると、先輩たちも教習所に通い、自動車の免許を取り、夜になると集まって、毎日のようにドライブとボーリングに出かけた。

 

あの頃がいちばん楽しかったなぁ。

 

そんな風に一緒に過ごした先輩たちだったから、卒業してしまう時は本当に寂しかったっけ。

 

やがて俺も好きな人は出来たけど、声なんて掛けられずにただ見てるだけの恋だったなぁ。

そんな風だから“とんぼ”で植木等が言った『恋に焦がれて鳴く蝉よりも、鳴かぬ蛍が身を焦がす』という台詞がやけに自分の中に入ってきたんだろう。

 

結局、その娘とは一言も話せずに卒業しちゃったんだけどさ。

 

その頃に形成されたんだか何だか、それからずっと『弾は一発だぜ』という恋愛思想で生きてきた俺も、アイータと出会い、小梅が生まれて、今に至るんだわ。

 

だけど、小梅に対して『弾は一発だぜ』と植え付ける気はないね。

やっぱり損するよ、それは。