豆一粒

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夕方から小梅がずっと豆を狙ってる。

それがまだ食べられないとなると、『うぇ~ん!』とうるさい。

 

夜になって待望の豆が登場すると、まず食べたがったが、抱っこしながら“鬼は外”の手本を見せてやると『おにわ~、おにわ~』と一粒ずつ投げる。

『そと』までは言えない感じがチョー可愛い。

 

そして、『食べていいよ』と手のひらに数粒の豆を乗せて差し出すとわしづかみ。

『おいしぃ!』と大喜びしてたけど、美味しくないよね、これ。

父ちゃん、いつの間にか41粒も食わなきゃいけなくなって苦痛だよ。

 

小梅は口いっぱいに頬張ったせいで飲み込めず、吐き出した。

『あらら』で手を洗わせたら、右手はグーを握ったまま開かない。

開かそうとしても開かない。

 

無理矢理開いたら、一粒隠し持ってた。

 

多分、峠を越えた先の村まで行くにはいくつもの難関が待ち受けてるけど、きっちりと種モミを持ってくる使者とかが勤まると思う。