父ちゃんのお弁当

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出勤の支度をしていると、決まって小梅が『おとーさん、どうしておしごと?』と言う。

そして、『おしごといかないほうがいい…』と。

 

うん、出来ることなら父ちゃんもずっと行かない方がいい。

あんなところに行く方がどうかしてる。

 

『でも、お父さんがお仕事行かないと?』

『まっくがたべれなくなっちゃう…』

『どっちがいい?』

『まっくたべれたほうがいい』

 

と、だいたい毎日こんな会話をして出勤する。

そして、小梅は父ちゃんの仕事を『かいしゃでおべんとうを「うまい、うまい」って、もりもりたべるおしごと』と認識している。

 

いや、間違ってはいないけどさ。

たとえば、幼稚園なんかで『おとうさんのお仕事は何ですかぁ?』なんて聞かれた時に困っちゃうなぁ…と思って。

 

『おとーさん、どうしておべんとうをたべるまえにそふとくりーむをたべちゃった?』

 

『何それ?』って思ったけど、2010年の秋に出張に行った時に父ちゃんの頑張ってる様を見せねばなるまいとアイータに送り付けた、あのソフトクリームの写メのせいだわ。

 

弁当とソフトクリームを食べて給料を貰えるなんて、そんなグルメレポーターみたいな仕事、誰だってやりたいだろう。

あんなところで、あんなザビエルの老害さに触れて、得することなどひとつもあるまい。