高校の柔道部の仲間が死んだ。
かなりの痛みを伴う難病で本人も助からないことは承知していたとのことだが、家族には他言するなと伝えていたらしく、誰も何も知らなかった。
最期もずいぶん苦しんだそうだ。
仲間と連絡を取り合い、お別れに行ってきた。
痩せこけてしまったというわけではなく、俺たちの知っている姿のまま眠ってる。
熱い奴でな。
高校一年の時に『内股が下手くそだ』と俺が言ったことで練習を重ね、しまいには得意技が内股になり、それで関東大会にまで行ったよ。
練習が面倒くさいと感じてる時も、おまえにだけは負けたくないと、お互いにムキになったもんだ。
それは社会に出てから何度か“趣味で”柔道をやった時も一緒だった。
俺はいつかまたムキになって乱取りをする時があると思ってたけどな。
わけのわからない世界でわけのわからない連中に触れてる今の俺にとって、あの時代の経験は財産だ。
その財産のひとつをなくしたよ。
なぁ、あの頃の俺たち、確かに熱かったよな。