高校の柔道部を語る時、やっぱり気仙沼の合宿は外せないだろうな。
一週間の遠征の中、港での夜祭りに出かけた時、柔道場とはまるで違う華やかな雰囲気に『生きててよかったぁ!』と叫んだのは死んだアイツだよ。
気仙沼の港も去年の震災で壊滅したと聞くし、もう俺たちの記憶の中にしかないんだよな。
バイク通学が許されてたアイツは、だけど、『一人で帰るのは寂しい』と言って、俺たちの自転車と並走してわざわざ時間をかけて帰ってたっけ。
ことあるごとに、日本最強はアントニオ猪木か前田日明かで言い合ったなぁ。
じゃあ、実験してみようとなって、アイツのハイキックが俺の側頭部を捉えて、俺はその場にダウンしたよ。
合宿場に飾ってある空手部OGのトロフィーやら縦やらを持ち出して、タッグチームみたいにファイティングポーズで撮った写真を昨日、通夜から帰って見てた。
練習が終わったらさっさと帰ればいいのに、体操用の薄いマットの上でお互いにドラゴンスープレックスだのを掛け合ってさ。
結局、いちばん効くのはみぞおちにくるノーザンライトスープレックスだったっけ。
先輩の家に泊まって、一睡もせずに二日酔いで、そのまま朝練に出かけてグラウンドを走るとか、いやぁ、若かったんだねぇ。
なぁ、そっちの世界じゃ、尾崎豊は歌っているのかい?