色即是空

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幼い俺が卒園式を終えて家に帰ったら、飼ってた犬の姿がなくて。

どこに行ったのかと聞いたら、車に轢かれて死んだと。

 

いると思ってたものがいなくて、最期の姿を見せてくれなかったことが今でも引っ掛かってる。

 

昨日の朝、小梅は寝たきりになってた犬に『いってきま~す!』と手を振って幼稚園に行ったらしいんだ。

それが帰ってきた時には姿がない。

小梅はいつも犬が寝ていたところを何度かチラ見するけど、自分からは触れない。

 

俺自身が幼少期に犬とお別れ出来なかった記憶を今も持ってるものだから、小梅にはその時間を与えたかったんだけどね。

やっぱり、死んでまうと体液も出てくるし、硬直も早くて。

 

小梅には『星になった』とかいう表現は使いたくなかったので、抱っこしながら『死んじゃった』と伝えたんだ。

そしたら表情が固まって、そのまま絶句。

 

それを寂しいことだと感じてるかどうかは不明だけど、“死”というものは小梅なりに理解はしている様子。

 

いろんな別れを経験しながら生きてくことにどういう意味があるのかはお父さんにもわからないんだ。