幼馴染の父親が亡くなったと聞いた。
高校を出てからは疎遠になったが、中学の頃は一緒に学校へ行っていた奴だ。
両親とも何だか洒落ていてね。
こんな漁師町だからどこの親もイメージ通りだったし、母親たちに至ってはそれこそいかりや長介とかジャイアンの母ちゃんとかみたいな人しかいなかったあの時代に、違和感があるくらい雰囲気が違ったんだ。
遊びに行けば見たことのないおやつなんかを出されるし、奴が持ってくる弁当は『それ、どんな味がすんの?』な感じで。
10年ぐらい前にその母親を見かけたけど、当時の面影はないくらいに老け込んでいて、悲しい気持ちになったのを覚えている。
そこによりそうようにしていた体格が良くて背筋もピンとした父親。
俺たちは子供の世代だからよくわからなかったけど、今思えばお似合いのカップルだったんだろう。
その父親が亡くなったという。
あんな風にお洒落に生きても死ぬ時は死ぬ。
“生きる”って何?
“死ぬ”って何?