こんな状況で行くのも不安だったけど、“本来の”入学式前に小梅は散髪に行ったんだ。
だけど入学式は延期になり、そうこうしているうちにまた伸びてきてしまった。
行きたくないけど、行かなきゃどうにもならんわな。
というわけで、行く。
扉は開放され、客も距離を取っている。
俺は小梅の散髪中、店内には入らずに外から見ていたんだ。
いつもならああだこうだと話す小梅も黙っているし、『こんなんでどう?』という髪型の確認も店員がジェスチャーで俺に伝える。
あれ?
三密って、俺が望んでいた光景じゃね?
“絡みたくない”が今、正解の世の中になってるよ。
特に床屋の店員の自分語りなんていちばんいらないヤツだ。
スーパーのレジ待ちでカートを押し付けてくるババアもいないし。
もしもコロナが終息しても、そのままいこうぜ。