俺がそいつを見たのは子供の頃さ。
大きな川の真ん中で見たこともないピンク色の鮮やかな光が浮いてたんだ。
しばらくフワフワと浮遊したあと、急に消えたんだ。
アメリカで広大なジャガイモ畑を持っているオヤジならこう言うだろう。
ピザばっかり食ってるアメリカ人はピザばっかり食ってるので、そんなことは言わないと思うが。
不思議なのは、あの時、かなりの数の釣り人がいたのだが、その光の存在にみんな気付いてざわつきつつも、『あぁ、アレね』くらいのリアクションで。
小学生の頃に見たあの光の正体がわからないまま50になり。
時々、何かの拍子に『あれは何だったんだ?』と思い出してはいたのだけど、やっぱり気になって調べてみたんだ。
そしたら、それっぽいヤツが引っ掛かった。
【球電】大気中を帯電し発光する球体が浮遊する物理現象、あるいはその球体そのものを指す。
あぁ、だから誰も騒がなかったんだな。
なワケないだろう。
光の正体がわかったとしても、おっさんたちが【球電】をすんなり理解して受け入れるはずがない。
おっさんたちはイシモチのことしか考えていないのだから。